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2009/11/29 (Sun)
短いですが、カルアが元の世界に帰った後のお話です。


目が覚めたら、そこは見知らぬ部屋だった。
いや、見知らぬ部屋ではない、この部屋、どこかで……。

そうだ、夢の中で見た部屋だ。
……ということは、この部屋には……。

「……ガーベラ……さん……。」

上半身を起こし、扉のほうに目を向けると、今まさに部屋を出ようとしているガーベラさんの姿があった。

『カルア……!?よかった、目が覚めたのね。大丈夫?』

そう言って車椅子を素早く回転させて、私の寝ているベッドの側に戻ってきてくれた。

「あ、はい、大丈夫です。心配かけてしまってすみません。」

『急に倒れて1週間も意識は戻らないし、医者は原因不明なんて言うから心配はしたけど。でも、謝らなくていいから。』

「そうですか、1週間……あっ、お店は……?」

『骨董屋の方はいつも通りにあの老夫婦がやってくれてたみたいね。パン屋の方は、私がパンを焼いて、お店のほうは、私が見舞いに行くときは事情を聞いた学生さんたち数人が手伝ってくれたりして、きちんと店を閉めずに営業してるわよ。』

「よかったです。皆さんに後でお礼を言わないといけませんね。」

『そうだけど、今はいろいろ心配しなくていいから、もう少しゆっくり休みなさい。原因不明ってことはきっと疲れが溜まりすぎてたんでしょうから。だいたい、働きすぎなのよカルアは。』

「いえ、原因はわかっていますし、身体には何も異常はありませんから、大丈夫……。」

『原因はわかっているって、何なの……?』

「それは……」

英雄と間違えられて異世界に召喚されて戦っていました、なんて言ったら、頭でも打ったと思われてしまうでしょうか……。
そもそも、カレイディアでの出来事自体が私のみていた夢、という可能性もあるので、言い出す勇気が出てこない。

『言い難い事なら無理には聞かない。』

私が話したくなるのを待ってくれるガーベラさんの優しさが嬉しくはあるものの、申し訳なくも感じる。


『ところで、さっきからその右手握ったままだけど、動かないの?開いた方が楽だと思うけど。』

気まずくならないように話題を変えてくれたのだと思うけれど、言われてみれば確かにずっと右手は握ったままだった。
その手の中には、何か硬いものの感触がある。

ゆっくりと手を開くと、そこには……。

『ど、どうしたの、カルア!?いきなり泣き出すなんて、どこか痛いところでもあるの?』

見覚えのある銀貨が握られていた。
レジーさんがマーケットに出していたのを見つけて、こっそりと買っておいた離さずの銀貨。
その銀貨がまさに、私の手から離れないまま、この世界にまで持ち出せていたのだ。

やっぱり、カレイディアでの出来事は、夢なんかじゃなかったんだ。

「いえ、どこも痛くないですし、大丈夫です。あの、ガーベラさん。この1週間、私が何をしていたのか、聞いてくれますか?現実離れしすぎていて、とても信じてもらえるような事ではないと思いますけど……。」

『どんなにとんでもない話でも、カルアがそんな真面目に冗談言えるはずないってわかってるから、信じてもらえないなんて心配しなくていいのよ。だから、聞かせて。』

「はいっ。あのですね、私は……」

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